御 礼 (2013.08.03)
平成25年8月3日
皆様からご愛顧頂きました復興支援酒場は平成25年7月31日の銀座店閉店をもちまして今回の役目を終えることとなりました。皆様へ心より感謝申し上げます。
生々しい話しとなりますが震災直後は会社の倒産を覚悟しました。弊社は秋田県に本社がある会社ですので、東北に店舗が集中しております。ライフラインは止まり、電話が通じない。スタッフの安否もわからない。いつものように食材を入手したくても業者も被災。スーパーやコンビニはシャッターを閉めている。町からは食料品と水が消えた。移動するにもガソリンがない。店は営業できる状態ではない。人々は飢えている。寒い。雪がちらつく天気。暖房もきかない。余震が頻繁に訪れる。とにかく情報が足りない。そのような環境の中、店にある食材を使って各々の店が炊き出しを行ってくれました。寒い中、使命感に燃えて頑張ってくれたスタッフを誇りに思います。
悪い状況は続きました。電力が不足となり町からはネオンが消えました。「自粛」という言葉が飛び交い酒を飲んだり、歓談することがタブーのようになったのです。人々は飢えている。助けなければならない。売上が無いので給料を払えないかもしれない。だから早めにそのことを伝えてリストラを考えなければいけない。しかし炊き出しで頑張っているスタッフを切ることはできない。切れないとしたら彼等へ給料を払わなければならない。先がみえません。売上が入ってこないので、生き残るためには経費を削るしかありません。人件費以外の経費削減を徹底的に指示しました。例えば大家さんに一時的な家賃の減額をお願いしました。多くの大家さんが快く応じて下さいました。大家さんも困っていたはずです。感謝の一言です。今となっては矛盾した話があります。ある大家さんが減額に応じて下さいました。しかしその大家さんの会社も被災されているとの情報が後程はいってきました。お見舞いを送りました。減額してもらいそのお金でお見舞いを送る。笑える話ですが混乱している当時はこのようなことが普通に起こったのです。
努力してもだんだんお金が無くなっていく。しかし、状況は一転しました。東京で花見が始まった頃から自粛ムードが一気に無くなったのです。様々な要因が重なったと思います。私が知る限りでは岩手の造り酒屋さんが「自粛などと言わずに我々の酒を飲んでください。それが復興に繋がります」と言われました。その言葉はマスコミで広く伝えられました。花見の最中に都知事選がありました。自粛を推奨する方と、酒を飲んで明るくなって暗さを吹き飛ばそうという方がおりました。日本国中が疲れていたのだとおもいます。貯められていたパワーが一気に爆発しました。町に活気が戻りました。戻ったどころか復興景気が訪れました。被災地の酒を飲もうという雰囲気が全国へ広がりました。暇だった被災地にはボランティアを始めとする多くの人々が集まりホテルは連日満室となりました。今度は食事をする場所がないくらいの好景気となりました。
私は「企業国家論」という自論を社員に伝えております。企業は国と同じだと思います。国の最大の役割は国民を幸せにすることです。企業が国家だとするとスタッフは国民です。弊社の究極の役割はスタッフを幸せにすることです。しかし我が国民だけが幸せになればいいのではありません。我々の国家が存在していることで他国も幸せになるような国家でなければいけません。国でいう税金は企業の利益です。私は利益の使い方を3つに分けて使うようにしております。まず第1です。この国を潰してはいけません。国がなくなれば国民が露頭に迷います。1つ目は国を存続させるために利益を使います。国が存続できるのは我が国に利益をもたらして下さるお客様あってのことです。多くの観光客が訪れる国は潤います。お客様は我が国を支えて下さる大切な支援者なのです。2つ目は国を支えて下さるお客様のために利益を使います。3つ目は国民である社員のために使います。つまり今回の復興支援酒場は2つ目のお客様のために利益を使うという考え方に基づいた活動であります。
場所を探しました。運よく仙台駅前に見つけることができました。直ちに開店準備にはいりました。復興支援酒場は多くのマスコミに扱って頂くこととなりました。それをご覧になった方々がたくさんいらして下さいました。想像以上の利益がでました。仙台は遠いので東京にも作って欲しいとの声を頂くようになりました。東京でも場所を探しましたがみつかりません。ならば弊社が経営している秋田料理をテーマとした「秋田川反漁屋酒場・銀座分店」を一時的に復興支援酒場としようとなりました。こちらも利益がでました。店には様々な方々がお出で下さいました。被災者、ボランティアの方、行政関係者の方、志しを持たれた人々等々。店は涙あり、笑いありとなりました。多くのコミュニケーションがうまれました。防災の議論しているお客様の姿をみたときはこの店の意義を感じました。
しかし仙台の復興支援酒場が繁盛しているのに他の店にお客様がはいっていない状況を何度か目の当たりにしました。「これは大変だ」と思いました。復興の旗を掲げお客様を奪っているとしたら我々の活動は間違っています。本当の復興は地場の店が繁盛することです。1年限定ということで始めた仙台店は予定通り平成24年9月30日で閉店と致しました。しかし閉店を惜しむ声を日増しに頂くこととなりました。被災地から離れた銀座店の延期を決めました。
皮肉なことに銀座店の客数は減っていきました。この店の目的は「利益を全額寄付」ということです。赤字を出してしまっては寄付することができません。平成25年12月31日閉店の予定を最も利益が確保できると試算した同年7月31日へ前倒ししました。力不足です。申し訳ございません。
復興支援酒場はなくなりましたが我々の復興支援は続いております。そして我々は復興支援酒場を今後も作って参ります。どこかで大きな何かが起こり、その地域が困っていたら、我々は必要とされる前提で、その地域へ出向き復興支援酒場を作り、その地域で雇用、仕入、家賃を落とし、残った利益を全額置いてくる活動をドリームリンクが考える2つ目の利益の使い方「お客様のために利益を使う」という理念のひとつとして刻み込んで参ります。
東日本大震災の復興はこれからです。皆様どうかいつまでも被災地を忘れずにいてください。東日本大震災が過去のものとなるようなことがないようにお願いします。この酒場へ関わって下さった全ての方々へ御礼を申し上げます。ありがとうございました。そして復興支援酒場を支えて下さった素晴らしい民族「日本人」であることを誇りに思います。
株式会社ドリームリンク
代表取締役 村上雅彦